パッショニスタは金色の夢を見る

TMだったり。あくせすだったり。そのときに心が動いたことを。

access/貴水博之ソロの歌詞を計量言語学+‪α‬的に分析してみた ②使用語彙のテキストマイニング編

②の今回は「『"らしさ"のある言葉』を抽出してみよう!」ということでテキストマイニングの手法を用いてやっていきます。

 

テキストマイニングって何なんだ

自分で説明するより、非常に分かりやすい説明があったので以下に引用します。

「大量の文章データ(テキストデータ)から、有益な情報を取り出すことを総称してテキストマイニングと呼びます。自然言語解析の手法を使って、文章を単語(名詞、動詞、形容詞等)に分割し、それらの出現頻度や相関関係を分析することで有益な情報を抽出します。」

www.traina.ai

 

もっと噛み砕くと、文章を刻んだ上で単語どうしの繋がりをみるみたいな感じです。たぶん。(あってるかな)

さすがに自力で7万字以上の膨大なデータを処理するのは不可能なので、フリーソフトウェアの「KH Coder」を使用しました。

khcoder.net

 

テキストデータさえあれば何でも出来てとても面白いので、興味があれば是非触ってみてほしいです!

(とても個人的な話ですが、まさにこれをやっていた最中にアルバム『Heart Mining』のリリースが発表されて、まさかのマイニング繋がりにめっちゃビックリした記憶があります)

 

▲マイニングを行うにあたって

頻出語抽出にあたり、

KH Coderの仕様上無視されてしまう人称代名詞26語

(私/僕(ボク)/僕達(たち)/僕等(ら)/俺(オレ)/俺達(たち)/俺等(ら)/君(キミ)/あなた(アナタ)/貴方/貴女/I/my/me/you/your/you’re/we)と

頻出が予想されるが抽出時に分解・無視されてしまう語句11語

(刹那い(さ)/彷徨う/access/AXS/heart/tonight/night/love/kiss/smile)

の強制抽出設定を行いました。

 

②ー1. 全体頻出語


では、それらを踏まえた上でまずは全体の歌詞における頻出150語とそれぞれの共起ネットワークを示していきます。

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何だかキラキラしてる(気がする)……!!!


accessの歌詞における総抽出語数は35,197(分析使用数 :16,837)で

異なり語数は3,838(分析使用数:3,524)でした。
ヒロソロの歌詞における総抽出語数は18,494(分析使用数:8,460)で

異なり語数は2,620(分析使用数:2,334)でした。

 

共起ネットワークは「出現パターンの似通ったものを線で結んだ図、すなわち共起関係を線(edge)で表したネットワークを描く(KH Coder HPより)」ものであり出現回数が多い語には「大きな円」、共起関係が強く表れた語同士には「太い線」がそれぞれ描画されるというもの。

できるだけ同じ語数(50語程度)の共起をみることを目的としたため、品詞の種類などは統一で出現回数を絞って調整しています。(access:25回↑、ヒロソロ:13回↑)

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150語を体言・用言で区分するとaccessでは体言が81語(54.00%)、用言が69語(46.00%)、ヒロソロでは体言が79語(52.67%)、用言が71語(47.33%)となりました。
このうち体言を分類すると「人称代名詞」「体の部位(より生じるもの、感情、行為)」「時間経過」「天気・自然」の4つのジャンルに分けられるものが多いことが判明しました。

 

人称代名詞
a:君(キミ)/me/you/your/my/I/僕(ボク)/we/僕ら(僕等)/あなた(アナタ)

ヒ:君/me/僕(ボク)/I/you/your/my/俺(オレ)/僕ら(僕等)/あなた(アナタ)

●頻出語は上位3語を人称代名詞が占め、最頻出は「君(キミ)」となった。なお、ヒロソロでは「キミ」は出現しておらず「」のみとなった。
●共起図では「君」と「僕」「you」と「me」の共起が強く表れておりaccess・ヒロソロともにその2つの関係性を歌った曲が多いという結果が出た。
●ヒロソロのみで「俺(オレ)」が出現、他の人称代名詞との共起がなく「心」「涙」との共起がみられた。


体の部位(より生じるもの、感情、行為)
a:heart/夢/love/愛/手/心/想い/胸/恋/瞳/kiss/言葉/目/涙/願い/smile/笑顔/鼓動/肌/指/声/腕/眼差し/背中

ヒ:愛/夢/心/love/目/胸/涙/言葉/手/気持ち/想い/瞳/笑顔/顔/鼓動/魂/悲しみ/kiss/声/頭/恋/願い

access・ヒロソロの共通点として「愛/love」や「夢」、「心/heart」「願い」などの感情・思考に関する語が非常に多く出現していることが挙げられる。
また、体の上半身の部位が集中して出現しており、とりわけ目に関する語(「瞳」「眼差し」「涙」)が多い。
●次の「時間経過」でも同じことがいえるのだが、ヒロソロでは強制抽出設定を行った英単語の出現が少なく和語・漢語の使用が多い。
●「」は両楽曲で82回と71回出現しているが「」がaccessでは35回、ヒロソロでは8回と出現数に差が表れている。

 

★キラキラは多分ここから感じるんじゃないかな…!と思える語彙の数々٩( 'ω' )و 

時間経過
a:今/night/夜/明日/未来/永遠/いつ/今夜/時/tonight/いつか/季節/瞬間/日々/夜空/時間/夜明け
ヒ:今/いつ/明日/未来/夜/時/永遠/いつか/夜空/過去/今夜/夜明け/瞬間/昨日/時間

access、ヒロソロともに夜に関連する語彙が多く使われていることが判明した。
accessでは「明日」「未来」「永遠」など「今」より後の時間軸に関する語が多く出現しているが、ヒロソロではそれらに加えて「過去」「昨日」といった「今」より前の時間軸に関する語も出現している。

 

★出ました、「夜」…!個人的にはaccessやヒロには日頃から夜の雰囲気を感じている(?)ので、この結果が出た時地味に嬉しかった(˙◁˙)


天気・自然
a:光/闇/空/星/風/影/宇宙/雪/雨
ヒ:闇/空/光/風/花/月/星/山

accessとヒロソロでは「光」と「闇」の出現順位が逆転している。
●人の目線よりもはるか上にある(上から生じる)ものがこの分類の大半を占めている。(まあお天気だから大体そうだよね)
●ヒロソロでは「月」「星」が合わせて16回出現しているのに対し、accessでは「星」「宇宙」が合わせて43回出現している。さらに共起図を参照すると「星」と「空」、「風」がグループ化されており、歌詞中でこれらが同じ括りとして使用されていることがわかる。

 

……と、ここまで4つの分類から頻出語の体言の内訳をみてきましたが、

accessは英単語の使用が多い・「今」より後の時間軸への言及が多いなどといった点が見えてきました。


また、前回のエントリーで「自然・宇宙」をテーマとした楽曲が少数であったことを述べていましたが、頻出語には「星」や「宇宙」を始めとした語が多く出現しており、

このことから前項で示したaccessはスペーシー(宇宙的)である」という本人たちの主張が歌詞の立場から成立しているといえると思います(˙◁˙)


 一方、ヒロソロは和語・漢語の使用が多く「今」より前の時間軸への言及が多いなど割と真逆の結果が表れました。

 


次に頻出の用言をみていきますが、accessの歌詞で最も使用されている動詞がマイナスイメージを持つ「終わる」であったことから、ここでは同じように「マイナスイメージを持つ動詞」に注目してみます。

 

a:終わる(26/44)/消える(13/29)/忘れる(8/21)/離す(19/21)/壊れる(1/16)/止まる(13/16)/迷う(5/17)/止める(3/15)/捨てる(1/14)/傷つく(2/14)/違う(0/13)/離れる(3/13)


ヒ:消える(7/23)/忘れる(6/19)/傷つく(2/14)/閉じる(0/12)/離れる(2/11)/隠す(4/10)/奪う(0/9)/壊す(1/9)/捨てる(0/8)/終わる(5/8)/すれ違う(0/7)

(※括弧内、左の数字が否定形で使用された回数/右の数字が総出現数)

 

access・ヒロソロともにテーマ分類では「恋愛5(現在進行型)」「はげまし」など前向きなテーマの割合が高かったため、マイナスイメージを持つ動詞が頻出しているというのは意外に思われました。
そこでKH CoderのKWICコンコーダンス(文脈検索)機能を用いてこれらの動詞の実際の用例を確認したところ、accessで「終わる」が44回出現しているうちの26回が終わらない」「終わりのないといった否定形で使用されていました。


accessでは「終わる」の他に「消える」「離す」「止まる」が総出現数の半分以上の回数否定形で使用されていることがわかっていただけるかと思います。

(「離さない」「止まらない」などの形でよく使われているということです、access曲主人公から確固たる意志を感じる…ッ!!!)

しかしそれに対して、ヒロソロでは「終わる」が半分以上否定形で使用されていますが、その他の動詞については半分以下、または全く否定形で使用されていないという結果が出ました。

大半をヒロが作詞する中で、発表名義の違いでこのように語彙が変わってくるのがかなり面白いな!??!?🤗

 

③ー2. 時期別特徴語

access


ここからはKH Coderの「関連語検索」機能でJaccard係数を算出した時期別の特徴語をみていきましょう。

 

Jaccard係数とは「2つの集合に含まれている要素のうち共通要素が占める割合(金子2018)*1」を示すもので、

この値が1に近くなるほど特徴的な語彙だといえるんです。

 

例えば「語A」が「1期」でどれほど特徴的かを求める場合は

『「1期」でなおかつ「語Aを含む」文書の数』で『「1期」か「語Aを含む」か一方でも当てはまる文書の数』を割ることでその係数を計算できるということ。(参考:khcoder HP)

 

では実際に算出した結果と語同士の共起ネットワークがこちら。

 

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図6にて期数を示す四角から放射線状に結ばれた語はその期で特徴的な語、

中心に集まっている語は各期を通して特徴的な語であるという風にみてもらえたら。

 

表10とこの図6を照らし合わせると、以下の点が見えてきました。


●1,2期を通して特徴的な語→「君」「僕」「今」「明日」「夜」「感じる」「終わる」など

●1期で特徴的な語→「今夜」「星」「恋」「街」「追いかける」「見つめる」など。

●2期で特徴的な語→「未来」「永遠」「宇宙」「世界」「輝く」「煌めく」など。

 

「今」「今夜」を歌う1期から「未来」「永遠」を歌う2期へと、描く時間軸が「今」より後へとシフトしていることがわかります。

しかし前項ではaccessの楽曲にて出現する恋愛タイプの変化を受けて 「“主人公の現在・未来の恋愛に対する心情”から“主人公の過去・現在の恋愛に対する心情”へと描写が移り変わっていった」と結論付けました。

これらを総合して考えると、AXS1期での恋愛テーマ曲は「現在・未来の恋愛に対する主人公の“今”の心情」、AXS2期では「過去・現在の恋愛を通しての主人公の“未来”への心情」を描写しているといえるんじゃないかな……!

 

これに関連して「愛」は1,2期通して特徴的であるという結果が出ているが、1期で「恋」が共起図に出現しているのに対し、2期では出現しておらず特徴的であるとはいえない。
加えて2期のみで「世界」が表10にて高いJaccard係数を示していることを踏まえると前項にて取り上げたヒロの「大きな世界観を描けるようになった」「男女間の恋愛だけじゃなく、もっと大きな視点(=「世界」)や気持ちで“愛”を描けるようになった」という2期での発言を裏付ける形となっているのではないかと思います。

 

その他としては、1期では「星」、2期では「宇宙」「輝く」「煌めく」といった、やはり「スペイシー(宇宙的)」な語が挙がってきている点が興味深いです☆彡

ここで歌詞にまつわる2人の言葉を引用すると『PATi・PATi』(エムオン・エンタテイメント,2007)にてヒロが「大ちゃんの作る音に刺激されて言葉が出てくる」、とか『キーボード・マガジン No.400』(リットーミュージック,2017)では大ちゃんが「(ヒロに曲を渡す際説明するかと問われ)イメージは言うよね。」と言っているので、楽曲の音色や雰囲気、伝えられたイメージに歌詞が影響されている可能性もなくはないのかなって考えてみたりもします。しない?する???えっしない???してたらすごく素敵だなって(ヲタクの戯言コーナー)

 

最後に2期の共起に「ナイ」という語が出現している点に少し触れておきましょう。

皆大好きヒロ語の代表格ともいえる「ナイ」が特徴的な語として上がってきました。

正直やっぱそうだよね!!!!!ってなったw

 

このへんは「④特殊表現」で改めて詳しく取り上げたいのでこのあたりで。

 


▲ヒロソロ

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図6と同様に四角から放射線状に結ばれた橙色の語はその期で特徴的な語、中心に近い語ほど各期を通して特徴的な語です。

 

表11-1,2と図7を照らし合わせると、以下の点が見えてきました。


全期を通して特徴的な語→「君」「今」「明日」「愛」「夢」など。
UO1期で特徴的な語→「目」「夜」「澄み切る」「気づく」「傷つける」など。
1期で特徴的な語→「俺」「自分」「心」「自由」「信じる」「感じる」など。
2期で特徴的な語→「街」「永遠」「抱きしめる」「引き寄せる」「見つめる」など。
3期で特徴的な語→「世界」「未来」「生きる」「探す」「知る」など。

UO1期はアルバム1枚(Satulation Flower)のみということもあり他とはかなり違った様相となっているが、1~3期ではかなり似通った語が出現してきました。

 

ですが、「自身」や「社会・人間関係」をテーマとする曲が「恋愛」の割合を上回っていた1期でのみ「俺」「自分」「自由」「涙」といった語が出現しています。

それらのテーマの中で「自分」がどのように使用されているかKWICコンコーダンスで確認したところ、

「つまらない自分が穴へ落ちてく(「IZAKOZA」(1996)、社会・人間関係)」
「せこい自分を振りきるまで(「Over The RULE」(1996)、社会・人間関係)」
「自分を愛せないならば 心の声を聴け(「愛すべきもの」(1997)、自身)」
「まったく自分に迷っている(「あかい月」(1997)、自身)」


というように「自分」を不完全な存在と捉え苦悩する様子が多く描写されています。


 ヒロがこの期に発売したアーティストブック『GET THE SUN-ADVENTURE』(音楽専科社,1996)の中で「言葉は大事にしたいですね。今、感じたこと、思ったことを素直に表現するっていうか。詞は自分自身に向けて書いているし、聴いてくれている人にも投げ掛けられるようなものにしたいですね。」と発言していることからも、1期はテーマだけでなく歌詞の詳細な内容も自己主張性が高く、ヒロ自身の思いが最もストレートに表れている期であるんじゃないかなといえると思います。

確かに落ち込んでいる時にこの時期の楽曲を聞くと引っ張られてしまうことがある…ない?

 

2期では「恋愛」テーマの楽曲が6割を超えたことに関連してか「愛」が高いJaccard係数を示しました。また、「me」「love」「you」「my」「kiss」といった強制抽出設定の外来語が1~3期の中で最も多く出現して、ある意味一番accessに近いかも、な感じ。
また、「街」がUO1期、「世界」が3期とともに共起に挙がっており、母数的にはっきり言えないけれどもソロ楽曲でもaccessでの傾向と同様に「大きな世界観」を描くように変化してきているのかなと。

 

3期では、「叫ぶ」「静寂」「鳴る」といった、音にまつわる語が出現しました。
また、この期でも「闘い」テーマの割合が「恋愛」テーマを上回っていたが、「闘う」「勝つ」「負ける」など勝負を連想させる語は使用されておらず「想い」や「願い」などの思想的な語が特徴として挙がっていることから、このテーマでは「闘い」の状況そのものではなく「闘うことを通しての主人公の心情」に表現の重きが置かれているといえます。

(でもこれはライダーソング全体にいえることなのかな……そういうの調べてみても面白いかもしれないです、興味がある方是非🤔✨)

 

▲まとめ的なもの

ここまで、Jaccard係数と共起ネットワークを用いて時期別の特徴語を分析してきましたが、accessとヒロソロ共通して「各テーマに対しての主人公の心情」を歌詞に盛り込んでいることが多いのかなあという結論に至りました。

 

また、ヒロソロでは「自身」への言及がみられたが、これはソロの1期が「“沈黙”直後の時期」なのに加えて、2人のイメージが付くaccessに対し、ソロでは1人だけのイメージが先行するため「自身」についての心情や思っていることを素直に吐き出しやすかったのではないかと考えたり。

 

私はその時期を知らないただのいちヲタクなのであくまでデータを見た上での想像でしかないのだけれど。。

語彙から歌詞を紐解いてみるととても興味深いものがありました。

 

さて、次回はヒロ語の大きな特徴のひとつでもある「当て字」について分析していきたいと思いますよ〜〜 (② 完)

 

 

*1:金子冴(2018)「【技術解説】集合の類似度(Jaccard係数,Dice係数,Simpson係数)―ミ
 エルカAIメディア(IT企業による人工知能機械学習自然言語処理周辺の技術情報
 のメディア)」(https://mieruca-ai.com/ai/jaccard_dice_simpson/)より

access/貴水博之ソロの歌詞を計量言語学+‪α‬的に分析してみた ①導入〜テーマ分類編

突然ですが、あなたはaccessの曲のどんなところが好きですか?

 

と聞かれたとき、あなたは何と答えるでしょう。

 

……大ちゃんのメロディ?ヒロのハイトーンボイス?

たくさん理由がある中で「あの個性的な歌詞が好き」と答える人も居るのではないでしょうか?

 

という訳で!

思わず目と耳を引く歌詞の秘密を解き明かすべく

卒論でaccess及び貴水博之ソロ(以下、ヒロソロ)楽曲の計量言語学*1的歌詞分析を行いました(˙◁˙)

 

分析観点は以下の4つ。

①歌詞のテーマ・タイプ分類 ←ここ

②使用語彙(テキストマイニング) ←近日公開

③当て字・準当て字(ルビ付いてないやつ) ←近日公開

特殊表現(いわゆるヒロ語) ←近日公開

 

分析にあたって

研究方針や対象楽曲についての基本的なルール的なのをまとめています。

内容を簡単にしてるけど殆ど卒論からそのまま引っ張ってきているので長いけど頑張って読んでね〜〜

(無理!って人は上のリンクからちゃちゃっと各記事へ飛んでください)

 

▲分析対象

対象楽曲を絞るために以下の5つの条件を設定しました。

①2018年10月発表分まで。

②正式な歌詞カード付属のCDがリリース(または公式に配布・配信)されている。

③同じバージョンが複数回リリースされている楽曲は初出時の歌詞を1度のみ採用。

④リミックスやライブ・バージョン、またライブでのみ演奏される未リリース楽曲(「Lovin' You」)は除外。

⑤インスト曲、他アーティストのカバー曲は除外。 

今回は以上の条件を全て満たす

access:105曲

ヒロソロ:68曲

計173曲(うちヒロ作詞は139曲)を対象としました。

なお、ヒロソロでは別名義(「HIRO☆TAKAMI」「タカミヒロユキ」「浅倉大介(Vocal:貴水博之)」)が存在しますが、それぞれ1,2曲程度であり結果に大きな影響は出ないと判断し、本研究ではこれらを除外せずいずれも「貴水博之」名義として研究対象に含めています。

(Grateful Circleも入れたいので早く正式な歌詞をください公式様……)

 

▲時期区分

25年以上もの長い間活動しているaccess

せっかくなので、ただ歌詞を見るだけではなく時期ごとに区切り

それに照らし合わせて結果を見ることにしてみました。

大きな出来事をきっかけとして区分していますが、あくまで自己流ですのでどうか御容赦ください。。

 

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UO1期1991年。

ヒロがaccessとしてデビューする以前のソロ活動を行っていた時期。

バンド活動期の曲はヒロが作詞を手掛けた曲がない点を考慮し、除外しています。

該当曲数は8曲。(Sg[シングル]:2曲,Al[アルバム]:6曲)

 

AXS1期1992年~1995年。

accessデビュー~“沈黙”(活動休止)に入るまでの時期。

該当曲数は38曲。(Sg:18曲,Al:20曲)

 

ソロ1期:1995年~1998年。

ヒロソロ活動開始~レコード会社・事務所を移籍し、ベストアルバム『HIRO THE BEST』をリリースするまでの時期。

該当曲数は34曲。(Sg:13曲,Al:21曲)

 

ソロ2期:1998年~2010年。

ソロ15周年を迎え、移籍直後からの楽曲を収録したアルバム『Best Destination』をリリースするまでの時期。AXS2期と並行してライブ等を行う。

該当曲数は11曲。(Sg:8曲,Al:3曲)

 

AXS2期:2002年~現在。

accessが活動を再開。現在も精力的に活動を行う。あくせすむげんだーい!

該当曲数は67曲。(Sg:30曲,Al:35曲,イベント配布2曲)

 

ソロ3期:2010年~現在。

2015年より毎年ライブ「LOVE&VICTORY」を展開し、新曲を数多く披露。

俳優としても2016~2017年にテレビ朝日系で放送された特撮作品「仮面ライダーエグゼイド」に出演、挿入歌を担当。

該当曲数は15曲。(Sg:2曲,Al:13曲)

 

▲作詞者の特定について

主に1期のほぼ全ての楽曲に見られるのが「作詞・作曲:AXS」という表記。

今回は個人単位での作詞者情報を得るためにJASRAC日本音楽著作権協会)の作品データベース「J-WID(ジェイ・ウィッド)」を参照、各楽曲に登録されている作詞者へ分類しました。

 なお、「Keep it」「Vertical Innocence」の2曲についてはJ-WID上でも歌詞カードと同じ登録(「AXS」、「貴水博之,AXS」)であったため、それぞれ個別の分類としています。

また、いわゆる三部作の作詞を担当する「朝霧遥」については、詳細な情報がないがJ-WID上でドラマメに作詞者として「井上秋緒」が登録されている点Wikipediaの「井上秋緒」のページに『1994年にはaccessの「DRASTIC MERMAID」「SCANDALOUS BLUE」「TEAR'S LIBERATION」の作詞を朝霧遥名義で手掛け、これらの楽曲を題材にした小説を発表している』と記述がある点を鑑み、本研究では「朝霧遥」=「井上秋緒」の作詞として扱うこととしました。

 

▲その他雑記

楽曲の基本データや歌詞をまとめるにあたってはExcelとWordを駆使しました。

歌詞カードとPCとにらめっこし続けてひたすら打ち続けた結果7万字弱。

本論と合わせたら10万字オーバーとか卒論への熱意溢れすぎわろた。。

もし同じような卒論を執筆中でデータのまとめ方に興味があったりする方はコメントかTwitter(@xxAXS_Kxx)へ一言いただければ何かアドバイスできるかもしれません…(かも、だよ)

 また、執筆にあたってはたくさんのaccessクラスタの皆様のご協力をいただきました。こんな場所からではありますが、感謝させてください…!

 こんなツイートにも温かい反応がたくさんあったんだよ…本当にありがとうございました…(´;ω;`)

 

かなり長くなってしまいましたが前置きはこのへんにして……

早速分析結果を見ていきましょ〜〜

 

 

①楽曲のテーマ・タイプ分類

①ー1. 全体分類

歌詞をテーマ別に分類するにあたり、「ユーミン言語学(連載)」『Jポップの日本語研究』(伊藤雅光氏/1997,2017)*2を参考に一部項目を変更して以下のようなテーマ体系を作成しました。

なお、本研究では先述の研究に従って「恋愛」「はげまし」などの大きな括りを「テーマ」、「恋愛」をさらに分類した11項目を「タイプ」と呼ぶことにしています。

 

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(PCの調子がよろしくないので表は大体紙面をパシャパシャしてます…ご容赦を…)
これに則って楽曲全体を分類した結果がこちらです。どーん

 

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恋愛」をテーマにした楽曲がaccessでは50.48%、ヒロソロでは44.12%となり、それぞれ最も多く歌われているという結果に。

そのうち上位3タイプはどちらも「現在進行>現在片思>過去未練」でした。

これは男性ソングライター7組と「カウントダウンTV・流行歌ランキング」1位のアーティストの恋愛タイプ及び1980年代以降デビューの女性ソングライターの恋愛タイプの「優性な順位」とされる「現在進行>過去未練>現在片思」、1970年代デビューの女性ソングライターの恋愛タイプで「優性な順位」とされた「過去未練>現在進行>現在片思」(伊藤2017)のいずれにも当てはまらない形となりました。

その他のテーマ・タイプは「恋愛11(未来期待型)」「恋愛9(現在冷却型)」「友情」がaccessのみに、「恋愛8(現在停滞型)」「闘い」「童謡」がヒロソロのみに出現しています。

恋愛2(過去非未練型)」「恋愛4(過去片思型)」といった2タイプは出現しなかったため、access・ヒロソロともに“相手への一方的な思いが吹っ切れた状態”を描写するのはあまり好きじゃないのかな?という結果に。

じゃあ何が好きなの?というと、access・ヒロソロともに「恋愛」の次に多いのは「はげまし」「自身」でこれらを合計すると全体の70%以上を占め、ここらへん好きなんだなって感じました。あくせすさんポジティブソング多いもんね。

一方、インタビュー記事などで「accessはスペーシー(宇宙的)」という趣旨の発言がよく見られるため、accessの楽曲に「自然・宇宙」テーマが多く出現するのではないかなと予想していましたが、意外とそんなに歌われていないことが判明しました。

 

①ー2. 時期別分類

続いて前述の時期区分ごとにテーマ分類を行った結果を以下に示していきます。

まずはaccessから。

 

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1期では出現した11個のテーマのうち恋愛は5種で全体の65.79%を占める結果となったのに対して、2期では15個のテーマのうち恋愛は7種と増加しているが、比率は43.29%に留まりました。

1期では「恋愛6(現在片思型)」「恋愛7(現在不安型)」「恋愛11(未来期待型)」などが出現しているが2期ではいずれも減少/出現なしという結果となり、それに代わるように「恋愛10(現在再燃型)」「恋愛3(過去追憶型)」といったタイプが出現しています。

このことから活動年数を重ね “主人公の現在・未来の恋愛に対する心情”から“主人公の過去・現在の恋愛に対する心情”へと好む描写が移り変わっていっているといえるのかなと。大人になったんだね……

 

また、2期では「はげまし」「自身」「高揚」といったテーマがいずれも1期に比べて4~5%上昇、恋愛タイプを抑えて上位に出現しており、その大半を作詞しているヒロが恋愛以外のテーマにも目を向けるようになったのが読み取れます。

この点と合わせて、以下に2期でのインタビューのヒロの言葉を引用します。

 

**********

(――作詞に関して変化したところ、変化してないところは?例えば20代の頃と違ってきたなぁと思うことはありますか?)

そうだなぁ…。今のほうがやっぱり年齢を重ねた分だけ、大きな世界観を描けるようになった気がします。自分が受け身になれたり、男女間の恋愛だけじゃなく、もっと大きな視点や気持ちで“愛”を描けるようになったり…。でも基本的に昔も今も“自分らしい”という部分では変わってないと思うな。

角川書店2003,p.147*3

 

(――(「Knock Beautiful Smile」の)“Knock beautiful smile. It’s beautiful life.”という歌詞のハマりも良いですよね。)

貴水:ここ最近だと思うんですよね。改めて音楽がどういった力を持つのかなって考えたときに、安易に聞こえちゃうかもしれないけど、やっぱりラブ&ピースは大事なことじゃないですか。音楽を通じて、そういうテーマを改めて力強く言える年代になったのかなと。

リットーミュージック2018,p.126*4

**********

 

続いて、同様にヒロソロ楽曲の時期別テーマ分類を行った結果を表5~表8、図4に示します。

 

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全期で上位3項目までに「恋愛5(現在進行型)」が出現し、UO1期とヒロが唯一全曲の作詞を手掛けている2期で最上位という結果となりました。

しかし1期では自らの主張や社会への不満を歌う「自身」「社会・人間関係」が合わせて39.39%となり「恋愛5(現在進行型)」を含めた「恋愛」全体の36.36%を上回っています。

このことから1期が他の期よりもヒロの自己主張性の強かった時期なんじゃないかなあと読み取ることができます。

3期でもこの期のみに出現する「闘い」が35.71%を占め、同じく「恋愛」全体を上回る結果となりました。これは3期の対象がまだ少ないということと、「JUSTICE」「Believer」など「仮面ライダーエグゼイド」関連の楽曲が多いことが大きな要因であろうと思います。

正直ちょっと時期を細かく分けすぎた感が否めない

 

※卒論執筆中には「Mistake」などの歌詞が分からなかったので除外していましたが「ワイルドタマシイ」の発売にあたり数年越しで研究対象に含められるので、是非増やして分析したいなあって考えています…( ˇωˇ )

 

とまあ、ここまで全体/時期別に分けてテーマの内訳をみてきましたが、全体の上位に入っているテーマはどの時期にもほぼまんべんなく出現してるけれども細かく変化していることが読み取れたのではないかなと思います。

次のエントリーでは、このテーマ分類結果も用いながら使用語彙をみていきますよ〜〜(① 完)

*1:統計学的な方法を用いて,言語や言語行動の量的側面を研究する学問分野」。朝倉書店| 計量国語学事典より引用

*2:伊藤雅光(1997)「ユーミン言語学」『日本語学』、(2017)『Jポップの日本語研究:創作型人工知能のために』朝倉書店

*3:角川書店(2003)『Filin’ GHOST』KADOKAWAより

*4:リットーミュージック(2018)『キーボード・マガジン 2018年4月号 SPRING No.400』より