パッショニスタは金色の夢を見る

TMだったり。あくせすだったり。そのときに心が動いたことを。

access/貴水博之ソロの歌詞を計量言語学+‪α‬的に分析してみた ①導入〜テーマ分類編

突然ですが、あなたはaccessの曲のどんなところが好きですか?

 

と聞かれたとき、あなたは何と答えるでしょう。

 

……大ちゃんのメロディ?ヒロのハイトーンボイス?

たくさん理由がある中で「あの個性的な歌詞が好き」と答える人も居るのではないでしょうか?

 

という訳で!

思わず目と耳を引く歌詞の秘密を解き明かすべく

卒論でaccess及び貴水博之ソロ(以下、ヒロソロ)楽曲の計量言語学*1的歌詞分析を行いました(˙◁˙)

 

分析観点は以下の4つ。

①歌詞のテーマ・タイプ分類 ←ここ

②使用語彙(テキストマイニング) ←近日公開

③当て字・準当て字(ルビ付いてないやつ) ←近日公開

特殊表現(いわゆるヒロ語) ←近日公開

 

分析にあたって

研究方針や対象楽曲についての基本的なルール的なのをまとめています。

内容を簡単にしてるけど殆ど卒論からそのまま引っ張ってきているので長いけど頑張って読んでね〜〜

(無理!って人は上のリンクからちゃちゃっと各記事へ飛んでください)

 

▲分析対象

対象楽曲を絞るために以下の5つの条件を設定しました。

①2018年10月発表分まで。

②正式な歌詞カード付属のCDがリリース(または公式に配布・配信)されている。

③同じバージョンが複数回リリースされている楽曲は初出時の歌詞を1度のみ採用。

④リミックスやライブ・バージョン、またライブでのみ演奏される未リリース楽曲(「Lovin' You」)は除外。

⑤インスト曲、他アーティストのカバー曲は除外。 

今回は以上の条件を全て満たす

access:105曲

ヒロソロ:68曲

計173曲(うちヒロ作詞は139曲)を対象としました。

なお、ヒロソロでは別名義(「HIRO☆TAKAMI」「タカミヒロユキ」「浅倉大介(Vocal:貴水博之)」)が存在しますが、それぞれ1,2曲程度であり結果に大きな影響は出ないと判断し、本研究ではこれらを除外せずいずれも「貴水博之」名義として研究対象に含めています。

(Grateful Circleも入れたいので早く正式な歌詞をください公式様……)

 

▲時期区分

25年以上もの長い間活動しているaccess

せっかくなので、ただ歌詞を見るだけではなく時期ごとに区切り

それに照らし合わせて結果を見ることにしてみました。

大きな出来事をきっかけとして区分していますが、あくまで自己流ですのでどうか御容赦ください。。

 

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UO1期1991年。

ヒロがaccessとしてデビューする以前のソロ活動を行っていた時期。

バンド活動期の曲はヒロが作詞を手掛けた曲がない点を考慮し、除外しています。

該当曲数は8曲。(Sg[シングル]:2曲,Al[アルバム]:6曲)

 

AXS1期1992年~1995年。

accessデビュー~“沈黙”(活動休止)に入るまでの時期。

該当曲数は38曲。(Sg:18曲,Al:20曲)

 

ソロ1期:1995年~1998年。

ヒロソロ活動開始~レコード会社・事務所を移籍し、ベストアルバム『HIRO THE BEST』をリリースするまでの時期。

該当曲数は34曲。(Sg:13曲,Al:21曲)

 

ソロ2期:1998年~2010年。

ソロ15周年を迎え、移籍直後からの楽曲を収録したアルバム『Best Destination』をリリースするまでの時期。AXS2期と並行してライブ等を行う。

該当曲数は11曲。(Sg:8曲,Al:3曲)

 

AXS2期:2002年~現在。

accessが活動を再開。現在も精力的に活動を行う。あくせすむげんだーい!

該当曲数は67曲。(Sg:30曲,Al:35曲,イベント配布2曲)

 

ソロ3期:2010年~現在。

2015年より毎年ライブ「LOVE&VICTORY」を展開し、新曲を数多く披露。

俳優としても2016~2017年にテレビ朝日系で放送された特撮作品「仮面ライダーエグゼイド」に出演、挿入歌を担当。

該当曲数は15曲。(Sg:2曲,Al:13曲)

 

▲作詞者の特定について

主に1期のほぼ全ての楽曲に見られるのが「作詞・作曲:AXS」という表記。

今回は個人単位での作詞者情報を得るためにJASRAC日本音楽著作権協会)の作品データベース「J-WID(ジェイ・ウィッド)」を参照、各楽曲に登録されている作詞者へ分類しました。

 なお、「Keep it」「Vertical Innocence」の2曲についてはJ-WID上でも歌詞カードと同じ登録(「AXS」、「貴水博之,AXS」)であったため、それぞれ個別の分類としています。

また、いわゆる三部作の作詞を担当する「朝霧遥」については、詳細な情報がないがJ-WID上でドラマメに作詞者として「井上秋緒」が登録されている点Wikipediaの「井上秋緒」のページに『1994年にはaccessの「DRASTIC MERMAID」「SCANDALOUS BLUE」「TEAR'S LIBERATION」の作詞を朝霧遥名義で手掛け、これらの楽曲を題材にした小説を発表している』と記述がある点を鑑み、本研究では「朝霧遥」=「井上秋緒」の作詞として扱うこととしました。

 

▲その他雑記

楽曲の基本データや歌詞をまとめるにあたってはExcelとWordを駆使しました。

歌詞カードとPCとにらめっこし続けてひたすら打ち続けた結果7万字弱。

本論と合わせたら10万字オーバーとか卒論への熱意溢れすぎわろた。。

もし同じような卒論を執筆中でデータのまとめ方に興味があったりする方はコメントかTwitter(@xxAXS_Kxx)へ一言いただければ何かアドバイスできるかもしれません…(かも、だよ)

 また、執筆にあたってはたくさんのaccessクラスタの皆様のご協力をいただきました。こんな場所からではありますが、感謝させてください…!

 こんなツイートにも温かい反応がたくさんあったんだよ…本当にありがとうございました…(´;ω;`)

 

かなり長くなってしまいましたが前置きはこのへんにして……

早速分析結果を見ていきましょ〜〜

 

 

①楽曲のテーマ・タイプ分類

①ー1. 全体分類

歌詞をテーマ別に分類するにあたり、「ユーミン言語学(連載)」『Jポップの日本語研究』(伊藤雅光氏/1997,2017)*2を参考に一部項目を変更して以下のようなテーマ体系を作成しました。

なお、本研究では先述の研究に従って「恋愛」「はげまし」などの大きな括りを「テーマ」、「恋愛」をさらに分類した11項目を「タイプ」と呼ぶことにしています。

 

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(PCの調子がよろしくないので表は大体紙面をパシャパシャしてます…ご容赦を…)
これに則って楽曲全体を分類した結果がこちらです。どーん

 

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恋愛」をテーマにした楽曲がaccessでは50.48%、ヒロソロでは44.12%となり、それぞれ最も多く歌われているという結果に。

そのうち上位3タイプはどちらも「現在進行>現在片思>過去未練」でした。

これは男性ソングライター7組と「カウントダウンTV・流行歌ランキング」1位のアーティストの恋愛タイプ及び1980年代以降デビューの女性ソングライターの恋愛タイプの「優性な順位」とされる「現在進行>過去未練>現在片思」、1970年代デビューの女性ソングライターの恋愛タイプで「優性な順位」とされた「過去未練>現在進行>現在片思」(伊藤2017)のいずれにも当てはまらない形となりました。

その他のテーマ・タイプは「恋愛11(未来期待型)」「恋愛9(現在冷却型)」「友情」がaccessのみに、「恋愛8(現在停滞型)」「闘い」「童謡」がヒロソロのみに出現しています。

恋愛2(過去非未練型)」「恋愛4(過去片思型)」といった2タイプは出現しなかったため、access・ヒロソロともに“相手への一方的な思いが吹っ切れた状態”を描写するのはあまり好きじゃないのかな?という結果に。

じゃあ何が好きなの?というと、access・ヒロソロともに「恋愛」の次に多いのは「はげまし」「自身」でこれらを合計すると全体の70%以上を占め、ここらへん好きなんだなって感じました。あくせすさんポジティブソング多いもんね。

一方、インタビュー記事などで「accessはスペーシー(宇宙的)」という趣旨の発言がよく見られるため、accessの楽曲に「自然・宇宙」テーマが多く出現するのではないかなと予想していましたが、意外とそんなに歌われていないことが判明しました。

 

①ー2. 時期別分類

続いて前述の時期区分ごとにテーマ分類を行った結果を以下に示していきます。

まずはaccessから。

 

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1期では出現した11個のテーマのうち恋愛は5種で全体の65.79%を占める結果となったのに対して、2期では15個のテーマのうち恋愛は7種と増加しているが、比率は43.29%に留まりました。

1期では「恋愛6(現在片思型)」「恋愛7(現在不安型)」「恋愛11(未来期待型)」などが出現しているが2期ではいずれも減少/出現なしという結果となり、それに代わるように「恋愛10(現在再燃型)」「恋愛3(過去追憶型)」といったタイプが出現しています。

このことから活動年数を重ね “主人公の現在・未来の恋愛に対する心情”から“主人公の過去・現在の恋愛に対する心情”へと好む描写が移り変わっていっているといえるのかなと。大人になったんだね……

 

また、2期では「はげまし」「自身」「高揚」といったテーマがいずれも1期に比べて4~5%上昇、恋愛タイプを抑えて上位に出現しており、その大半を作詞しているヒロが恋愛以外のテーマにも目を向けるようになったのが読み取れます。

この点と合わせて、以下に2期でのインタビューのヒロの言葉を引用します。

 

**********

(――作詞に関して変化したところ、変化してないところは?例えば20代の頃と違ってきたなぁと思うことはありますか?)

そうだなぁ…。今のほうがやっぱり年齢を重ねた分だけ、大きな世界観を描けるようになった気がします。自分が受け身になれたり、男女間の恋愛だけじゃなく、もっと大きな視点や気持ちで“愛”を描けるようになったり…。でも基本的に昔も今も“自分らしい”という部分では変わってないと思うな。

角川書店2003,p.147*3

 

(――(「Knock Beautiful Smile」の)“Knock beautiful smile. It’s beautiful life.”という歌詞のハマりも良いですよね。)

貴水:ここ最近だと思うんですよね。改めて音楽がどういった力を持つのかなって考えたときに、安易に聞こえちゃうかもしれないけど、やっぱりラブ&ピースは大事なことじゃないですか。音楽を通じて、そういうテーマを改めて力強く言える年代になったのかなと。

リットーミュージック2018,p.126*4

**********

 

続いて、同様にヒロソロ楽曲の時期別テーマ分類を行った結果を表5~表8、図4に示します。

 

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全期で上位3項目までに「恋愛5(現在進行型)」が出現し、UO1期とヒロが唯一全曲の作詞を手掛けている2期で最上位という結果となりました。

しかし1期では自らの主張や社会への不満を歌う「自身」「社会・人間関係」が合わせて39.39%となり「恋愛5(現在進行型)」を含めた「恋愛」全体の36.36%を上回っています。

このことから1期が他の期よりもヒロの自己主張性の強かった時期なんじゃないかなあと読み取ることができます。

3期でもこの期のみに出現する「闘い」が35.71%を占め、同じく「恋愛」全体を上回る結果となりました。これは3期の対象がまだ少ないということと、「JUSTICE」「Believer」など「仮面ライダーエグゼイド」関連の楽曲が多いことが大きな要因であろうと思います。

正直ちょっと時期を細かく分けすぎた感が否めない

 

※卒論執筆中には「Mistake」などの歌詞が分からなかったので除外していましたが「ワイルドタマシイ」の発売にあたり数年越しで研究対象に含められるので、是非増やして分析したいなあって考えています…( ˇωˇ )

 

とまあ、ここまで全体/時期別に分けてテーマの内訳をみてきましたが、全体の上位に入っているテーマはどの時期にもほぼまんべんなく出現してるけれども細かく変化していることが読み取れたのではないかなと思います。

次のエントリーでは、このテーマ分類結果も用いながら使用語彙をみていきますよ〜〜(① 完)

*1:統計学的な方法を用いて,言語や言語行動の量的側面を研究する学問分野」。朝倉書店| 計量国語学事典より引用

*2:伊藤雅光(1997)「ユーミン言語学」『日本語学』、(2017)『Jポップの日本語研究:創作型人工知能のために』朝倉書店

*3:角川書店(2003)『Filin’ GHOST』KADOKAWAより

*4:リットーミュージック(2018)『キーボード・マガジン 2018年4月号 SPRING No.400』より